父また帰る

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「おまえらの頃とは(ちご)うて、基礎じゃ何じゃいうて、今の子らは大変よのう。 この子の時代には、また(ちご)うてくるんじゃろうが」  両手でココアのカップを抱えるヒカルに、敏夫が目をやった。 「来年からは、センター試験自体なくなって、新テストだから」  にべもなく言った肇が、ヒカルの向かいに置かれた自分のカップに手を伸ばす。  すっかり冷めてしまったコーヒーに口をつけた瞬間、また電話が鳴った。 「はい、鈴木(すずき)です。――お、山崎(やまざき)か。……ああ」  電話に出た肇が、またかという顔になると、空いた手の指で眉間を揉み始めた。 「え、親父を見かけた? 高校のそばで?  ははは、おまえ老眼入りすぎじゃねーの?  ……そうそう、他人の空似だって。 もう3年たつんだぜ?  親父が亡くなってから」 <了>
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