1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
第三話 エディの行方
「それじゃエディ、エイミーを病院に連れて行ってくるから」
翌日である金曜日、ベラはエイミーの手を握りながら留守番をするエディにそう声をかけた。エイミーはといえば、昨日エディからもらった花で作った花冠を頭に乗せている。
「分かった。エイミー、なんともないといいね」
「うん……お兄ちゃん、がんばってくる」
「微熱が出てるだけですぐに良くなるよ、きっと」
「そうだといいのだけれど。じゃあね。散歩に行くなら鍵をちゃんとしめなさいよ」
エイミーは、朝から微熱がある状態が続いていた。咳もあり、風邪だと思ったベラは病院に連れて行くことにしたのである。
「あと、昨日は湖のほとりに行ったみたいだけど、私たちがついていないときは行かないようにしなさい。危ないから」
「でも、あのあたりは花も咲いててきれいなんだよ。エイミーの花冠だって……」
「何かあったら嫌なのよ、分かってちょうだい。いいわね」
「はぁい」
「それじゃあね」
ベラの口調に負け、エディは口を尖らせながらもうなずいた。
「さてと、宿題やろうかな」
見送ったエディはカバンからノートやペンケースを出し、学校で出された課題に取り組むことにした。
ページを開く音や外の自然の音だけが、部屋の中に響く。ペンの音も。
そうして、ある程度白かったノートが黒くなったところで、ペンを置いて伸びをした。
「ん、んん〜〜……ん?」
窓の外にジャックが顔を見せた。小屋から出られないはずだが、どうやら柵を飛び越えて来てしまったらしい。
これまでも似たことはあり、柵を高くしようと両親と話してそのままだったことを思い出す。
「ジャック、散歩に行きたいのかな。よし!」
エディはノートを開きっぱなしにして、家の鍵だけを持って外に出た。ドアの鍵をしめると、ジャックの顔に手を伸ばす。
「散歩にいきたい?」
そうだ、というように、首を縦にふる動きをする。エディはふふ、と笑って小屋へと行くと、いつもの道具を取り出した。
「じゃ、行こう」
そうして、昨日同様、準備を終えてジャックの背中に乗ると湖の方へと向かって歩き出した。
◇
最初のコメントを投稿しよう!