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「みんな、待って!確かに私達とは違う容姿だけれど、怖いように見えるけれど……!異世界の人だとしたら、私達と違うのは何もおかしなことではないわ!」
「そうだ、きっと彼は、女神様が遣わせてくれた、世界を救ってくれる勇者に違いない!」
――え、これそういう展開なの!?
Aはどうやら女、Bは男らしい。が、らしい、というのは口調がそれぞれ女っぽい、男っぽいからであって、見た目からでは全く性別はわからない。もっと言うと、声もなんかひび割れてくぐもっていて、デスボイスばりに低いので萌え要素なんぞ1ミリもない。
どうやら僕を庇ってくれているらしい、ということはわかるが。
「……村長の娘のアリアと、息子のジョシー……お前達が言うなら、そうかもしれないな……。この村で一番清らかな心と力、そして美貌を持つ二人に庇われようとは……幸運な男よ」
そして、大きな触手の一体がため息(?)をついてそんなことを言う。
「二人に感謝するがいい、異世界の者よ。生き残りたくば、勇者としてこの世界を救ってみせるがいい」
「え、ええ……!?」
展開が無駄に早すぎるというか、説明省かれすぎてわけわからんのですが。そしてアリア=A?とジョシー=B?がずるずると駆け寄ってきて口々に心配してくれているのはわかるんですが――僕には既にどっちがどっちかわかりません。え、これが村一番の美男美女?え?
ていうか、女神さまとやらにも一度も会ってないし、説明もまったくされてないし、この世界の世界観も全然わからんのですがまじでこの状況で冒険スタートせにゃんらんのだろうか。
「勇者様、頑張ってください……!私、女神様が選んだ勇者様を信じています!」
「俺もだ、勇者!頼む、世界を救ってくれ!」
僕の両手に粘液をぬるぬる絡ませながら、触手二体が擦り寄ってくる。僕は鳥肌を立てながら思った。もしやこの二人、物語のメインヒロインと親友ポジ(ライバルポジ?)だったりするのだろうか?既にどっちがヒロインでどっちが親友かわからなくなりつつあるのですが?
――め、女神様とやら!流石にこれは無理、無理!元の世界に帰すかリスタートで、マジで頼んます!!
バケモノと呼ばれたワイ、このままバケモノまみれになって冒険に出なければならないらしい。
正直言って、嫌すぎる。
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