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今流行の異世界転移をしたら、周囲の怪物からバケモノ呼ばわりされて怖がられました。
「ぎゃあああああああバケモノおおおおおおおおおおお!」
鼓膜が破れんばかりの絶叫に、僕は思わず耳を塞いだ。
どうやら僕は、今流行の異世界転移というやつをしてしまったらしい。朝目が覚めたら、なんか西欧風異世界っぽい場所にいました、という実にテンプレートな展開だ。
いや、どうして異世界流行なんてメチャクチャなものが流行してるのかさっぱりわからんのだけど!頼むから僕を平穏無事な生活に戻してくれと切に願うけれど!ていうか早く家に帰ってマナミちゃん(黒猫、メス)とイチャイチャさせてくれと心の底から思うけれど!
正直そんなツッコミさえも吹っ飛んでしまうのは――たった今悲鳴を上げた集団が、揃いも揃って“触手だらけのモンスター”だったがゆえだ。
――ごめん意味わかんない!なんで僕、紫色のぬるぬるの触手がいっぱい生えた、どこぞのエロゲのモンスターみたいなのに取り囲まれてるわけぇ!?ここ、ライトノベルでお馴染みの異世界ってやつじゃないの!?
ていうか、バケモノはお前らだ!と言いたい。周囲に人間らしき姿はなく、エルフのような人間にちょっとデカい耳が生えたような可愛くてきょぬーな女の子の姿もなく。揃いも揃って謎の職種の怪物ばかりなのだから全く夢も希望もない。なんでこいつらの言葉が完全に理解できてんの僕、なんてツッコミさえも野暮な気がしてくるほどのドン引きぶりだ。
「こ、怖い……!体の色が、紫じゃ、ない!なんて不健康そうな肌色!!」
いやいやいや、紫の方が怖いんですが。死人の色っぽいんですが。
「め、目玉が二つもあるなんて……!」
え、二つもってことはお前ら目玉あったの?触手まみれでお前らの顔のどこが眼で鼻なのか口なのかさっぱりわからんのですが?
「ひいいい!う、腕と足がそれぞれ二本しかない……!ば、バケモノ!不吉だわ……!」
ちょっと待て、お前らのその触手ってもしかして手足だったりするのでしょーか!?
――やばい、ツッコミ追いつかねえ……!
広場のような場所で取り囲まれて、やんややんやと騒がれる僕氏。どうしたものかと困惑していると、少し小さめな触手の塊がずるずるとはいだしてきて僕の前に立った。その隣には、その触手の塊よりはちょっと大きな触手が。
面倒くさいので片方を触手A、もう一方を触手Bとでも呼んでおくことにする。
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