*後悔したくない

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「ハル、お前、絶対車体黒にしたの後悔してるだろ」  言いながらカナ(にい)が乗り込んだフォレスターは、クリスタルホワイト・パールという色らしい。まぁ要するに白じゃん、と思いつつ……カナ(にい)ってこういう所うるさいのよね、と思ってしまった。  カナ(にい)によると、黒の車はドアの開け閉めで指紋とか付きやすいらしい。わー、だとしたら温和(はるまさ)の車、汚さないようにしなきゃっ。そう思ったんだけど。 「別に俺、指紋とか(そんなの)気にしねぇし」  車は走りゃ十分なんだよ、という温和(はるまさ)に対して、「いやいや車は男のロマンだろ」とか夢見がちなことを言うカナ(にい)が印象的だった。  気持ちを切り替えて問いかけた、先のセリフに「奏芽(あいつ)、束縛されるの嫌うだろ」と返される。  誰かの車に乗り合うということは、カナ(にい)にとっては束縛に当たるらしい。 「みんなで一緒に動いたりするのは制約になるから嫌なんだと」  私の疑問を汲み取ってくれたのか、温和(はるまさ)が噛み砕いて説明してくれる。  確かに誰かのお世話になるのって、その人に合わせないといけないから。  私、免許証は持っているけれど、いわゆるペーパードライバーで、そもそも自由に乗り回せる自家用車を持っていない。  少し遠出をするとなると、常に公共の交通機関で時刻表に縛られるか、もしくは乗せてくれる誰かの都合に合わせるしかないのだ。 「カナ(にい)、ホント贅沢っ!」  たまに、ぐらいいいじゃない!とか思ってしまったのは、私にはない選択肢をカナ(にい)が持っていることへの嫉妬かな。
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