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「そーいや、お前は車、欲しくないのかよ」
聞かれて、「うーん」と考える。あったら便利だろうな、とは思うけれど……今のところそれほど必要性を感じない。――それに、何より。
「ま、お前が運転するとか考えるとゾッとするからやめといて正解だな」
と先手を打たれてしまった。
むぅー。何で先に言うかな？ 超ド級の運転下手、自分で認めるのと、他者から言われるのとでは重みが違うのにっ。
ぷぅーっと頬を膨らませて見せたら、「お前の運転練習に付き合わされたことあんだから、当然の反応だろーが？」って言われてぐっと言葉に詰まる。
「……あの時はホントごめんなさい」
しゅんとして謝らねばならない程度には、温和を怖い目に遭わせた自覚、あります。
大人しくなった私に満足したように、温和が口の端をほんの少し引き上げたのが分かった。
「で、音芽。このまま直帰でいいのか？」
ややして温和に問いかけられた私は、少し考えてから「ん、大丈夫」と答える。
家に入る前にほんのちょっとだけ温和に時間、作ってもらおう。
さっき鶴見先生と色々あったとき、私、後悔したんだもの。
温和に気持ち、伝えられていないこと。
「あ、あのね……温和。アパートに着いたらほんの少しでいいから時間、もらえる、かな？」
恐る恐るそう切り出したら、温和が「少しだけなら」とぶっきら棒につぶやいた。
温和はきっと逢地先生が好きなんだから、私のこの想いは粉々に砕け散る。
でも……いいの。
言わないほうが後悔しちゃうって……私、気づいたんだもん。
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