*後悔したくない

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***  温和(はるまさ)の部屋のチャイムを鳴らすと、すぐに反応があって、扉が薄く開かれた。  わざとインターホンの死角になるように立った甲斐があったかしら? 「ごめんね、温和(はるまさ)」  わざわざ時間を作ってもらって。  そう続けようとしたら、「出直してこい」と扉を閉められそうになる。  そうはいくもんですか!  こうなるのは想定の範囲内。  私は、一か八かで閉じられかけた扉の隙間に手を差し入れる。  温和(はるまさ)が本気で嫌なら、私の腕、扉に挟まれてグイグイ潰されてしまうかもしれない。  でも……ドSだけど温和(はるまさ)、私を故意に傷つけるような真似はしない。  何となくだけど、そう信じてるの、私。 「音芽(おとめ)、手、どけろ」  温和(はるまさ)が怒ったように言うのへ、私は「イヤだ」と食い下がる。 「何で可愛い格好して来ちゃいけないの? 私のこと、そんなに嫌い?」  私は温和(はるまさ)のこと、こんなに大好きなのに!  心の中でそっと付け加えたら、胸の奥がキュッてして切なくなった。    私は迷った挙句、可愛い部屋着すら拒否(スルー)して、デートにだって着て行けそうなレトロな小花柄プリントの、シャツワンピースを選んだの。  色は温和(はるまさ)指定の小豆色(あずきいろ)の部屋着とよく似た色合いのボルドー。  開襟デザインになっていて、首回りがスッキリして見えるし、裾がふわっと綺麗なフレアラインになっているのも女の子らしく見えて可愛いと思うの。  ゴムギャザーのウエストのお陰で、着た時に女の子らしいメリハリが出せるし、脚だって長く見えちゃう美スタイルの優れものよ?  これを着て来れば、温和(はるまさ)に全力拒否されるのは分かっていた。  でも、負けないっ!  告白くらい、可愛い格好でさせてよ?
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