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でも、そのせいで私が温和の優しさを踏みにじったからかな？
私、温和を傷つけてしまった。
温和が息を飲む気配に、私は彼の顔を見て瞳を見開いた。
「温……和？」
何でそんな悲しそうな顔、してるの？
「俺が……酷い事したから、だよな？ 怖がらせて悪かった。……もう不用意に触れたりしないから……だから――、頼む。そんなに警戒してくれるな」
今度は温和自身に大きく距離を取られてそう言われてしまって、私はびっくりしてしまう。
ち、違っ。温和、それ、誤解っ！
慌ててそう言い募ろうとしたら、またしても着信。
温和は私を一瞬だけ気にしてから、「ごめん」。――そう言い残して、まるで私から逃げるように、今度こそ電話に応答してしまった。
「もしもし。逢地先生、さっきは出られなくてすみません。え？ 今ですか？ はい、ええ。大丈夫です。――どうしました？」
私、誤解だって言えてないっ。
待って、温和っ。
スマホを片手にキッチンの方へ行く温和の背中を見送りながら、私はギュッと唇を噛み締める。
温和、今、逢地先生って言ってたよね。
着信、また彼女からだったんだ。
そんなに再々かけてくるってことは、大事な用件ってことだよね。
でも……何で……今、なの？
何で……こんな……うまく行かないの？
私はただ、温和に大好きよって伝えたかっただけなのに――。
ねぇ、温和、誤解ぐらい……解かせてよ？
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