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彼の腕からは解放されたけれど、すぐそばに温和がいて……手を伸ばせば触れられるという現状を意識すると、どうしても照れてしまう。
私はかしこまるように布団の上に正座をすると、手をもじもじさせながら温和に問い掛けた。
「えっと……温和のこと信じられるか否か、だったよね……？」
言うと温和が無言でうなずいた。
私はギュッとスカートを握りしめてから、恐る恐る口を開く。
「信じる信じないの前に……ひとつだけ聞かせて？ 温和、逢地先生のことは……どうするつもり……なの？ まさか彼女ともそのままで私とも？」
――私……二股はイヤだよ……？
結構頑張って言ったのに。
そう問いかけた途端、「はぁっ？ なんだよ、それ」と思いっきり驚いた顔をされてしまった。
「ずっと思ってたけど……何でことあるごとに逢地先生が出てくるんだよ？」
逆にそう問いかけられて、私は言葉に詰まる。
「温和、逢地先生とお付き合いしてるんじゃ……ない、の？」
前に放課後、二人きりでこそこそしてたじゃない？と咎めるように言ったら、笑われてしまった。
「そ、それにっ。さっきだって電話……」
温和の反応の意味が分からなくて、一生懸命言いつのろうとしたら、その言葉を遮るように、「お前さ、それ、盛大な勘違いだから」って言って、温和がニヤリと笑うの。
何だか気が抜けてしまって、思わず正座を崩してぺたんこ座りをしたら、それを見計らったように温和に頭をポンポン、って撫でられた。
い、意味分かんないっ。
何で今このタイミングでそれ？
ムッてして思わず温和の手を掴んで睨んだら、さらに楽しそうに笑われてしまった。
「音芽、もしかしてあの日からずっとそれ、気に病んでたり？」
それが嬉しくてたまらないと言う風に上機嫌な温和を見て、私は凄く悔しいって思った。なのに温和が余りに屈託のない笑顔を見せてくれるから、気を抜くと毒気を抜かれてしまいそうで。
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