*繋がる心と……

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温和(はるまさ)だけ納得してて……ずるい」  それでも拗ねながら、言いたいことはちゃんと言えたと思う。  なのに――。 「正直なこと言っていいか? 俺さ、お前がそんな風に俺のことで思い悩んでるって考えただけでゾクゾクするんだけど……」  実際に温和(はるまさ)から返ってきた返事は想像の斜め上で、私は戸惑いに揺れる瞳をゆっくりと見開いた。 「だから、さ。このまま誤解、とかずにおいてもいいだろ? なぁ音芽(おとめ)、もう少しあれこれ思い悩めよ」  って酷すぎない? 「温和(はるまさ)はっ。私に同じことされても……平気、なの?」  悔しくて彼を睨みつけながら聞いたら「それは無理な相談だ。俺、どんなことしてでもお前を問い詰めるな」って即答で。  「だったら」って言ったら、「お前、俺のこと信用してねぇじゃん? 口でいくら説明したって意味ないだろ」ってにべもないの。  真実が知りたければ自分で逢地(おおち)先生に確かめろって言いたいのかな。  温和(はるまさ)、時々カナ(にい)とダブって怖い時がある。  私が小さい頃に見た、優しかったハル(にい)はどこへ行ってしまったの?  恨みがましく温和(はるまさ)を見つめたら、不意に真剣な顔で見つめ返されて、ドキッとさせられる。 「――俺だって今まで散々お前にヤキモキさせられてきたんだ。少しは仕返しさせろよ」  って何それ?  私、温和(はるまさ)をヤキモキさせた覚えなんて微塵もないし、昔っから全力で温和(はるまさ)が大好きってオーラ全開だったと思うのに。思い当たる節がなさすぎて困ってしまう。 (あ、でも……)  そこまで考えて、ダダ漏れになりそうな恋心を隠したくて、妹という立ち位置(ポジション)(こだわ)っていたんだったと思い出した。  それを温和(はるまさ)が真に受けていたのなら、それこそが「ヤキモキさせた」に当てはまるのかな。
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