3103人が本棚に入れています
本棚に追加
「……バカ音芽。そんなん却下に決まってんだろ」
なのに、言葉半ばで温和にダメ出しをされてしまった。
「なぁ、音芽。情けない本音……言って、いいか?」
涙目で温和を睨んだら、至極真剣な顔で温和が私を見つめてきて。私は思わず彼に見入ってしまう。
「……情けない、本音?」
ややして小さな声で温和の言葉を復唱したら、温和が私の視界を手のひらで覆い隠しながら、小さな声で言うの。
「俺も……めちゃくちゃ……緊張してる」
――お前が相手だと思うと、俺は本当情けないぐらい駄目な男になるんだよ。
最後の辺りはほとんどささやきに近くて、私は温和が実際にそんなことを言ったのか、自信が持てない。
視覚を奪われていて、温和の口の動きも表情も読み取れなくされてしまっているから、それは尚更で。
「温和……?」
恐る恐る彼の名を呼んでみるけれど、なかなか目に載せられた手は退けてもらえなかった。
私は息を吸い込むと、児童らを諭すような調子で温和に訴えかける。
「……温和。私も……アナタに触れたい。手、放して……くれると嬉しい、な……? その……に、逃げたりしない、から……」
最初のコメントを投稿しよう!