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私の言葉に、温和が息をのむ気配がした。
ややしてそっと両腕を開放してくれた温和だったんだけど……。
「あ、あの……温和さん? 目……」
視界は未だに彼の手に覆われたままで、私は依然まぶたに載せられたままの温和の手に、戸惑いながらもそっと触れた。
なのに全然動いてくれる気配がない温和に、私はもう一度声をかける。
「温和?」
うーん。何か、このままでは埒があかない気がする。
と、不意に外から聞こえてくる雨の音が強くなって、私はそれに励まされるように手に力を込めた。
ギュッと温和の手首を掴むと、少し強引に彼の手から視界を逃す。
そうして温和を見上げたら……。
「なっ……」
こっちが照れてしまいそうになるぐらい、温和が目端を赤く染めていて。
え? 温和って……こんなに照れ屋さんだったの?
私、知らなかった!
「あんまジロジロ見んな」
男の沽券に関わる、とか眉間にしわを寄せてもっともらしいことを言って私を見ようとしないの、本当可愛い。
「ね、温和、お願い。こっち、見て?」
言ったら、逆にふいっと視線を外されて「黙れ、バカ音芽」って言われた。
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