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外からは依然として地面を激しく叩く雨の音が聞こえてくる。
それと一緒に、私の頭の中にもザーッて音とともに膜が張っていくみたいで、何も考えられなくなってきた。このまま見つめていたらダメだと思うのに、温和から視線を外せないの。
と、温和の顔がグッと近付いてきて、キスされるって思った私はギュッと目を閉じる。
でも、待てど暮らせど全然口付けされる気配はなくて。焦ったさに恐る恐る目を開けたら、温和にクスッと笑われた。
私の目の前、吐息が絡み合うギリギリのラインで止まっている温和を潤んだ瞳で睨んだら、「次はお前からキスしろよ……」ってささやかれて――。
その声を耳にした途端、私の心臓はドクンッと跳ね上がる。
ああ、温和。――お願い、私にもっと命令して?
「出来るよな?」
念押しするようにそう言われた私は、温和の首筋にそっと手を伸ばして、彼の顔を自分のほうへ引き寄せる――。
「温和……」
目ぐらい……閉じてよ。
思いながら、私は目蓋を伏せると、彼の唇に自分のそれをそっと押し当てた。
柔らかくて温かい温和の唇に、私の胸はドキドキと高鳴る。
温和に……聞こえていませんように……。
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