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温和は、そっと顔を耳元に近づけてくると、甘く掠れた声音で「口、開けよ」って耳朶に吹き込んでくるの。
私は彼の声にゾクッと首をすくませると、従順にも言われた通り薄く唇を開く。
温和に支配されることが心地いいと感じてしまう私は、変な子かもしれない。
そう思うのに、抗えないのは何故だろう。
小さい頃からずっと温和の言いつけは絶対だと思って育ってきたからかな?
でも……。考えてみたら、彼が「俺に近付くな」と要求してきた時には逆らうことはできたのだから、全てが全て命令通りというわけではない気がした。
きっと、私が温和の命令に逆らえないと思ってしまう時って、私自身が望んでいることと、温和の要求が合致しているときだ……。
私は「温和に命令されたから仕方なくという体」で、「彼の要求に従っているふり」をしながら「自分の欲求を満たしているだけ」に違いない。
ごめんね、温和。
私、すっごくずるい……。
でも――。
でも、どうか叶うなら、このままアナタに隷属させられたふりを……させて欲しい。
そうしたら……多分どんな恥ずかしいことも受け入れられる気がするの。
私に、アナタとの一線を越える勇気を……ください。
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