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「疲れたぁー」
鶴見先生不在の……。しかも週明け一発目の月曜日は、思いのほか私のライフを削ってくれた。
正直な話、初体験の翌日だったことも手伝って、物凄くしんどかったし、腰にきてる。
でも、下半身の違和感を思いのほか意識せずに過ごせたのは、裏を返せばこの多忙のおかげだったのかもしれない。
とはいえ――。
さすがに電池切れの一歩手前。
今から逢地先生と混み入ったお話をしなければいけないのだから、少しは体力を回復しておかないと。
実はこういう時のために、冷蔵庫に“鳥飼”と書いた名札を付けた秘蔵っ子の飲むヨーグルトを仕舞ってある。
私はそれを取り出して、痛む腰に手を当てたまま一気に煽った。
あーん。甘酸っぱくて美味しいっ! それに、冷たくて心がシャキッとする。
「くぅーっ! 生き返るぅー!」
ホッとして吐き出したら、
「オッサンかよ」
突如笑いを多分に含んだ声を背後から投げ掛けられて、ビクッとする。
放課後の給湯室。
誰もいないと思って油断していた私は、その声に慌てて振り返った。
「バカ音芽。くち……」
言われてごく自然に伸びてきた手に、上唇の上を軽く親指の腹で拭われる。
「はっ、温和っ!?」
思わず無意識に闖入者の名前を呼んでしまってから、慌てて口に手を当てた。
「きっ、霧島先生……何かご用ですか?」
今更だと思いながらも苗字で呼び直した声は、照れ隠しもあっていつもより1オクターブばかり上がってしまう。
「別に用はねぇけど――お前、今から逢地先生んトコ、行くんだろ?」
用はないと言いながら、しっかり用事ありそうじゃないですか、霧島先生。
煮え切らない態度の温和に、私は小さく溜め息を落とす。
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