真相が知りたい

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*** 「疲れたぁー」  鶴見(つるみ)先生不在の……。しかも週明け一発目の月曜日は、思いのほか私のライフを削ってくれた。  正直な話、初体験の翌日だったことも手伝って、物凄くしんどかったし、腰にきてる。  でも、下半身の違和感を思いのほか意識せずに過ごせたのは、裏を返せばこの多忙のおかげだったのかもしれない。  とはいえ――。  さすがに電池切れの一歩手前。  今から逢地(おおち)先生と混み入ったお話をしなければいけないのだから、少しは体力を回復しておかないと。  実はこういう時のために、冷蔵庫に“鳥飼(とりかい)”と書いた名札(タグ)を付けた秘蔵っ子の飲むヨーグルトを仕舞ってある。  私はそれを取り出して、痛む腰に手を当てたまま一気に煽った。  あーん。甘酸っぱくて美味しいっ! それに、冷たくて心がシャキッとする。 「くぅーっ! 生き返るぅー!」  ホッとして吐き出したら、 「オッサンかよ」  突如笑いを多分に含んだ声を背後から投げ掛けられて、ビクッとする。  放課後の給湯室。  誰もいないと思って油断していた私は、その声に慌てて振り返った。 「バカ音芽(おとめ)。くち……」  言われてごく自然に伸びてきた手に、上唇の上を軽く親指の腹で拭われる。 「はっ、温和(はるまさ)っ!?」  思わず無意識に闖入者(ちんにゅうしゃ)の名前を呼んでしまってから、慌てて口に手を当てた。 「きっ、霧島(きりしま)先生……何かご用ですか?」  今更だと思いながらも苗字で呼び直した声は、照れ隠しもあっていつもより1オクターブばかり上がってしまう。 「別に用はねぇけど――お前、今から逢地(おおち)先生んトコ、行くんだろ?」  用はないと言いながら、しっかり用事ありそうじゃないですか、。  煮え切らない態度の温和(はるまさ)に、私は小さく溜め息を落とす。
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