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「アレは……ショックでした」
逢地先生がしょんぼりしたお顔をして、恨めしげに私をじっと見つめていらして。
え? 何? これ、どういう――?
そこまで考えて私はハッとした。
わ、私っあの日、温和のキス疑惑にざわついて、鶴見先生を巻き込んで2人で帰宅、したような……。
恐る恐る逢地先生を窺ったら、
「私、あの日、霧島先生に恋の相談をしたんです。鶴見先生が好きなんですが……何かいい告白の方法はありませんか?って」
あの時、別件で温和の手を借りた逢地先生は、温和と2人きりになれたのをチャンスだと思って、恋の相談を持ちかけたらしい。
温和は鳥飼先生と兄妹のような関係だと聞いていたし、私が、鶴見先生のことで何か言っていなかったか探りを入れてみられたそうで。
「あ、あのっ……は、霧島先生、その時なんて……」
思わずそれが気になって口を挟んでしまった私に、逢地先生がクスッと笑う。
「『ただの同期ってだけですよ。別に取り立てて仲が良いってわけじゃありませんから、変なこと言わないでください』って。怒られちゃいました」
は、温和っ。
彼のムスッとした不機嫌な顔がありありと目に浮かんできて、私は思わず固まってしまう。
逢地先生、なんかうちの温和がすみませんっ!みたいな心境です……。
「ね? いつも沈着冷静で穏やかな霧島先生らしくないでしょう? びっくりしちゃいました」
そこで私を見つめていらした逢地先生と目が合った瞬間、2人で笑い合ってしまう。
「あの時はお兄さんとして、妹に彼氏が出来るのなんて認めたくないって感じなのかなって思ってたんですけど……。考えてみたら嫉妬、ですよね、あきらかに」
私をじっと見つめてくる逢地先生の目は、確信に満ちていて。
「お二人は両思いですよね?」
と、ニコッとされた。
温和に、みんなへの恋人になりました報告はまだしないで?とお願いしたくせに、私、逢地先生に隠し通せる自信がないです、ごめんなさい。
私はドギマギしながら明らかに不自然に逢地先生の視線から逃れると、
「あ、あのっ。じゃあ、霧島先生が逢地先生にキスしようとしていたのって……」
苦し紛れに一番聴きたかったことを、単刀直入にズバッと切り込んだ。
「え? キス?」
途端逢地先生がきょとんとなさって。
次の瞬間ハッとして申し訳なさそうなお顔をなさった。
「ごっ、ごめんなさいっ。アレ、私が感覚を掴んでみたいって霧島先生に無理矢理お願いしたんですっ」
感覚を掴んで……?
無理矢理お願い?
え? 何、何?
どういう……意味?
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