嵐の前の……

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***  ふたりでファミレスデートをしてからの、帰りの車中。 「お腹一杯だね~」  温和(はるまさ)のほうを見つめながらお腹をさすりさすりそう言ったら「食いすぎなんだよ」と笑われた。 「だって、期間限定フェアのデザートが美味しそうだったんだもんっ」  普通初デートと言ったら、もっともっと緊張して、飲み物も喉を通りません!っていう状態なのかもしれない。  でも、私と温和(はるまさ)は幼なじみ。  小さいころから一緒にご飯を食べたりしていた仲だから。  今更取り繕っても、って思った私は、“いつも通り”でいくことにしたの。  「何にする?」ってメニューを渡されれば、「えっとね」って好きなものを頼んだし、「デザートとか食わなくていいのか?」って聞かれたら「じゃあ」ってページをめくっちゃう。  結果、明らかにいつもより食べすぎちゃって、お腹一杯になってしまった。 「温和(はるまさ)だって結構ガッツリ食べてたじゃない。なのに何でそんな平気そうな顔してるの? 苦しくないの?」  言えば、「俺は男だからな」っておかしくない? 「食欲に男も女もないもん」  ぷっと頬を膨らませてそう言ったら、「体の大きさに男女差はあるだろ」って言われて。  ついでのように、「それに俺、夕方に飲むヨーグルトとか飲んでねぇし」って意地悪く言って私を黙らせるの。 「温和(はるまさ)の……馬鹿っ」  拗ねてそっぽを向いてそう言ったら、「けど俺、お前のそういうところも悪くねぇと思ってるから」って……不意打ち。  可愛い、とかストレートに褒めるんじゃなくて婉曲させるところも含めて……ずるい。
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