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一緒の部屋に泊まったら……また昨日みたいなこと、しちゃうのかな?
ドキドキしながら温和が支度をして戻ってくるまでの時間を潰す。
お湯張りなんてボタンひとつだし、洗濯物も取り込んで所定の位置に仕舞い終えた。
どうしよう。
あっという間にやることなくなっちゃった。
そう思った途端、昨日のあれこれがフラッシュバックしてきて顔がブワリと熱くなる。
あーん、……ダメっ。
緊張しておかしくなりそう。
そう思った私は、「そうだ、佳乃花に電話してみよう!」と思い立った。
佳乃花なら、温和が来たって言えばすぐに電話を切れる。
結局飲み会だってまだ出来ていないし、その辺の予定も詰めなきゃ。
月曜の夜20時過ぎ。
佳乃花の彼氏の一路は残業が多いって言ってたし、大丈夫……だよね?
“今、平気?”
思いながらメッセを送ったら、すぐに折り返しで電話がかかってきた。
『大丈夫よ。どうした? 何かあった?』
聞き慣れた佳乃花の声に、全身の力が抜ける。
それで初めて、緊張してガチガチになっていたんだ、と気が付いた。
「あ、あのね……私……その……。は、温和とっ、付き合うことになった!」
同僚たちにも親にもまだ正式には伝えていない――逢地先生はともかくとして――けれど、私の恋心を幼い頃から知っている佳乃花にだけは。
そう思って思い切って告げたら、一瞬間があって……即座に耳が痛くなるような叫び声がスマホから飛び出してきた。
「ひゃっ」
びっくりして慌ててスマホを耳から離すと、
『ごっ、ごめん! 嬉しくてついっ』
佳乃花が謝ってくる。
「んーん、平気」
フッと小さな笑い声と一緒にそう伝えたら、
『ね、音芽。初めては……もうあげちゃったの!?』って……佳乃花っ!
「何でそれ、一番最初!?」
他に聞くことないの?
そう続けたら……ひとしきり笑われて、しばし沈黙。
「――?」
キョトンとしてスマホを握りしめる私に、『――否定、しないんだね』って。
佳乃花、勘が良すぎるよ。
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