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佳乃花との電話中にも関わらず、温和がきた!ってソワソワしたのは事実だし、言われてみれば違わないんだけどねっ。
めっちゃ期待してたみたいに思われるのは何だか照れくさい。
温和に捕らえられていて顔をそらすことができないので視線だけでも……と横へ逃したら、そんなのお構いなしにキスされてしまった。
温和の後ろで玄関扉がパタン…と乾いた音を響かせて閉じる。
「――違わないよな?」
口付けを解くとすぐ、間近でそう聞かれて、私は温和の魅力に絡めとられたみたいに「……はい」と答える。
私の返答に満足したようにフッと表情を緩めると、温和が「これ、要らなかったな」って鍵を返してくれた。
後ろ手に彼が玄関を施錠する音がして、一気に緊張した私は、それを誤魔化すみたいに「ありがとう」ってちょっぴりトンチンカンなことを言って、慌ててそれを受け取った。
私がソワソワした手つきで玄関先の所定の位置にそれを戻したのを見届けて、温和が腰を抱いて問いかけてくる。
「さっきまで誰かと話してたみたいだけど、電話?」
こちらにだって温和の部屋の物音が聞こえてくるのだ。
逆だって然りなわけで。
「……っ、か、佳乃花とっ」
背後からやんわりと耳を食まれる感触にゾクッと体を震わせながら答えたら、「佳乃花……って。ああ、お前の同級生の……確か朝日さん、だっけ?」と聞かれて。
「んっ、……そうっ」
身体をよじるようにして温和の唇から耳をそらせると、今度は首筋にキスされた。
「どんな話したの?」
そんなの温和には関係ないよ?って突っぱねたっていいはずなのに、私には何故かそれが出来なくて。
「き、金曜にねっ、飲もうかって」
言うと、温和が「今週?」とつぶやいて黙り込む。
何となく声に険があった気がするのは気のせいかな?って思いながら、頷いた。
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