嵐の前の……

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「ごめんなさい。温和(はるまさ)付き合う(こうなる)前から佳乃花(かのか)と飲みたいねって話してて……それで」  言ったら、「たち?」って思わぬところに反応されてしまう。 「“たち”って……朝日さんのほかは誰だよ」  睨み付けるように聞かれて、私はドキッとしてしまう。 「……い、一路(いちろ)」  うつむいてそう言ったら「一路って……三岳(みたけ)一路か?」って睨まれる。  他に一路なんて変わった名前の知り合いはいないよ、温和(はるまさ)。その一路だよ?  思ったけどそんなこと言えるような雰囲気じゃなくて。 「うん……」  温和(はるまさ)の顔色を窺いながらそっと頷いたら思いっきり睨まれた。 「温和(はるまさ)……」  所在なく握ったままの彼の手をそっと引っ張ったら、「どこで……」って言われて。  一瞬何のことを言われたのか分からなくて言葉に詰まってしまう。 「どこで飲むのか?って聞いてるんだけど」  温和(はるまさ)は一路のことについてはそれ以上何も言わなかったけれど、明らかに不機嫌さに拍車がかかったのは分かった。 「ま、まだ……決めてない……」  つぶやくように言ったら舌打ちされてしまった。
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