嵐の前の……

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***  温和(はるまさ)は昨夜、結局何もしてこなかった。  今の状態を見れば一目瞭然だけど、シングルサイズの狭いベッドで身体を寄せ合うようにして一緒には眠ったし、どさくさにまぎれて彼にしがみついてみたけれど、本当にそれだけ。  というのも。  話はお風呂上がりのことにさかのぼる。  心の準備がなかなか出来なかった私は、一生懸命急き立てて、温和(はるまさ)に先にお風呂を済ませてもらった。  深呼吸しながら温和(はるまさ)の後に入ったお風呂の中で、頑張って覚悟を決めて。  割と可愛めのパジャマで武装して、ソワソワドキドキ、温和(はるまさ)の前に立った。  そんな私を見て、彼が開口一番「先に言っとくけど」って前置きをしてから言ってきたの。 「今日は俺、お前を抱くつもりねぇから」  温和(はるまさ)が来てくれるのを、部屋で一人待っていたとき、昨日と同じことをするんだろうなって思ったら恥ずかしくてたまらなかったくせに。  そのせいでお風呂だっていつもより長風呂になってしまって上せそうになったくせに。  いざ一緒にいるのに求められないと知ったら、途端に不安になってしまうものなんだって思い知らされた。  何で手を出してくれないの?って切なくて堪らなくて。  私は自分が、こんなにも温和(はるまさ)とのエッチに重きを置いていたなんて思わなかった。 「……私の身体……魅力、なかった?」  入浴後の私を前に、こちらをまともに見ようともしてくれないばかりか、エッチなし宣言をしてきた温和(はるまさ)に、思わず泣きそうな声で彼を(とが)めるようにつぶやいてしまってから、ハッとして口をつぐんだけれど遅かったみたい。  温和(はるまさ)に瞳を見開かれてしまった。
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