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わざとらしく逸らしていた視線を腹立たしげに私に戻した温和が、
「――お前ってマジで腹立つぐらい鈍感だよな」
って溜め息混じりに言う。
その言葉の意味が分からなくて、私は思わず「え?」とつぶやいた。
私のその反応に、「分かってたけど」と吐き捨てるように付け加えて、「俺、お前に負担かけたくないから我慢するって言っただけなんだけど? そんなことも分かんねぇの?」と睨まれる。
温和の抱かない宣言は、初体験の翌日だったのに、息をつく暇もないぐらい一日中忙しかったのを気遣ってくれてのセリフだったみたい。
確かに温和を初めて受け入れた私の下腹部は、未だに違和感とともにほんの少しの出血が続いている。
さっきお風呂に入る前に確認したら、微かではあるけれどおりものシートが薄っすらと赤く染まっていて、自分でもこの状態で温和とまたしちゃっても平気かな?って気になっていた。
きっとそれは今日無理しすぎたことも関与していて……鶴見先生のことがショックだったことも絡んでいたりするんじゃないかと思うんだけど。
温和に求められたら、現状を気付かれないようにどうやってショーツを脱いだらいいの?とか色々思い悩んでいたのも事実で。
温和が私の身体のそういう事情に精通しているとは思えないけれど、でも……無理をさせたのではないかと気遣ってくれているのは痛いほど分かった。
だから私も無駄な心配を掛けたくなくて、温和の厚意に甘えさせてもらうことにしたの。
理由さえはっきり分かれば、逆にそういう行為なしで温和に恋人特権で思う存分甘えられるっていうのは、幼い頃を彷彿とさせられて心地よくもあって。
私、内心「わーいっ!」ってはしゃいじゃった。
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