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「温和、有難うっ!」
はしゃぐあまり、「気遣ってくれて」というのを飛ばしてしまったけれど、分かるよね。
襲わないでくれて有難う!じゃないからね?
それを全身で伝えたくて、先にお風呂から上がって、ベッドの縁に腰掛けていた温和の横にポンッて飛び乗るように腰掛けると、彼の首筋にギュッと抱きついてお礼を言ったの。
途端、温和が「――っ、だからそういうのは……」って言いかけて、口をつぐんでしまった。
うつむいた温和が怒ったようにムスッとしているの、気になる。
ねぇ、そういうのは……なに?
うつむいたまま吐き捨てるように「……そんな嬉しいかよ……」とボヤいた温和は、さっきの言葉の続きを言うつもりはないみたいで。
不機嫌そうなその雰囲気に、心臓がヒュッて縮こまった。
私は温和にギュッて出来るの、すごく嬉しいけど、もしかして温和は違うの、かな?
よくよく考えてみたら子供の頃だって、温和、私がしがみ付くの、嫌だったかもしれない。
優しいお兄ちゃんだったから怒らずに甘んじて抱きつかせてくれていたけれど、実際は迷惑に思われていた可能性もあるわけで。
「……あ、あのっ、もしかして……私にくっ付かれるの、キライ?」
恐る恐る聞いてみたら思いっきり盛大に溜め息をつかれてしまった。
「嫌ならされた時点で跳ね除けてる。俺はただ――」
言いかけて、「いや、やっぱいい」と言葉を飲み込んだ温和が、私をそっと抱きしめ返してから頭を優しく撫でてくれて。
私はたったそれだけのことで、心臓がバクバクして照れてしまう。
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