思い切り泣いていいんだよ?

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***  チャイムを鳴らして名乗ると同時に、インターホンから『待ってたよ』という声がして、ガチャリと玄関扉が開けられた。 「佳乃花(かのか)、今日、一路(いちろ)は?」  2人は同棲中なので、一応確認。 「まだ19時(しちじ)になってないもん。当然仕事だよぉ〜」  まるで何でもないことのようにへらりと笑ってから「ま、立ち話も何だし、とりあえず上がって上がって」と靴を脱ぐよう促された。 「一路、毎日帰り遅いみたいだけど……寂しくないの?」  両手に提げた荷物を手にしたまま、足をすり合わせるように行儀悪くパンプスを脱ぎながら聞けば、「んー? さすがに慣れちゃった」とあっけらかんと返される。 「そっか……」  私が佳乃花(かのか)みたいにもっとサラッとした性格だったら、温和(はるまさ)も負担に思ったりしないのかな。  ふとそう考えた途端、今更だよ……って思って目にじんわりと涙が滲んでしまう。 「ちょ、ちょっと音芽(おとめ)、なになに、どうしたのっ!」  言葉と同時にギュッと抱きしめられて、ふっと心の緩んだ私は、思わず手にしていた荷物をドサリと足元に落としてしまった。  それが「あっ!」とか思えない程度には、私、参ってるみたい。  佳乃花(かのか)にギュッと抱きしめられたままリビングのラグのところに連れていかれる。 「ほら、とりあえず座って」  言ってラグの上の座布団に私を座らせると、佳乃花(かのか)は私が廊下に取り落としたままの買い物袋を取りに行った。  それを「音芽(おとめ)ぇー。ちょっと買いすぎじゃない? めっちゃ重いんだけど」って言いながら両手に提げて戻ってくると、ラグの中心に置かれたローテーブルの上にドサリと載せた。
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