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温和のその表情には何故か既視感があって……それはいつのどんな時だった?って考えたら心の中にモヤがかかったみたいに記憶が曖昧になる。
それでも思い出そうとしていたらゾクッと悪寒がして、さらに一層気持ちがザワザワしてしまう。
なんだろう、これ。
すごく……怖い。
私は頭を軽く振ると、身体を蝕む寒気を追い払いたくて気持ちを切り替えることにした。
「――温和……。だったら」
私はすぐ横に立つ温和の手をギュッと握って彼の視線を自分に向けさせる。
「だったら……せめてふたりきりになれたときは……愛されてるって実感を……たくさん頂戴? ……お願い」
***
もともと温和とは今日、二度目の約束をしていたんだからそうなるのは必然でしょう?
ギュッと温和の手を引いて、「お願い」と繰り返して彼をじっと見つめた私に、温和が瞳を見開いた。
ついで、ごくりと唾を飲み込んだのが分かって。
見上げる視線の先、温和の喉元が上下したのがとても色っぽくて、物凄くドキドキしてしまう。
抱いてもらうことが絶対的な愛情表現だとは思わないけれど、少なくともその間は私、温和を独占できる気がするから。
「ダメ?」
って小首を傾げたら、
「ダメなわけ……ないだろ」
言われて、ギュッと抱きしめられた。
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