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「音芽?」
明らかに私らしくないセリフだったから、温和もおかしいと思ったみたい。
ギュッとしがみつく私を引き剥がして、顔を覗き込んできた。
「一緒に、って……本気か? お前まだそんなの……」
無理だろ?って言われるのが悔しくて……「無理じゃないっ」って先んじて彼の言葉を封じると、温和をじっと見上げる。
「温和と一緒にお風呂に入るのなんて、初めてじゃないもん」
自分でも恥ずかしさで頬が熱くなっているのが分かったけれど……それでも幼い頃のことまで持ち出してでも、何の問題もないのだとアピールしたかったのは、誰に対する虚勢だろう?
「……分かった」
温和が私の頭をクシャリと優しく撫でてくれる感触が優しくて……彼には本当、何にもやましいことなんてないんじゃないかなって思ってしまった。
だって温和、そういうのがあったら絶対態度に出るタイプだもの。
そう思ったら、やっとのこと素直な気持ちを言葉にしてみようって思えたの。
「あ、あのね、温和」
ギュッと温和の手を握って彼を見つめたら、温和が私の前に膝を折って視線を合わせてくれた。
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