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「貴方から川越先生のにおいが、してる……」
温和の目をじっと見つめて言う。
怖いけど、逸らしたり、しない。
「温和、川越先生を抱きしめたり……した……?」
恐る恐る……でもはっきりと疑念を問いかけたら、温和が一瞬きょとんとしてから、次いで怒ったように眉根を寄せて「あの女」って腹立たしげにつぶやいた。
「……すまん、音芽。――俺の、……ミスだ」
言って、温和が私をじっと見つめてから「今度からこんな事ないように気をつける」って言った。
はっきりとそうだと言葉にはしなかったけれど、それは彼女を抱きしめていないという意思表示にも取れなくて、しかも今後もそう言うことがあるかもしれないと示唆する発言とも取れて。
不安になった私は
「……イヤ!」
気が付いたら、自分でもびっくりするぐらいハッキリと温和にそう訴えていた。
「どんな理由があっても……そういうのは、嫌っ! 温和、お願いだから……私以外の女性を……抱きしめたり……しないで!?」
私、大抵のことは我慢できる。
温和に強く言われたら逆らえない。そう言うところがあるの、自覚してる。
でも、そんな私にだって、許せないことがあるんだって分かって……欲しい。
何でも容認できるわけじゃ、ないんだよ?
言って、温和をじっと見つめたら、彼がハッとしたように瞳を見開いて。
「温和……お願い」
もう一度そう言ったら、涙がポロリとこぼれ落ちた。
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