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温和が過去に何人かの女性と付き合ってきたことがあるの、私、知ってる。
川越先生がその中の1人だったって言われても、私、違和感なく受け入れられると……思う。
でもそれは……今現在の温和が、彼女のことを気にしていないことが前提だよ?
分かってる?
涙で潤んだ瞳で温和をじっと見つめたら「だからお前の記憶は物凄く曖昧なんだよ、音芽。あいつは……俺の元カノじゃない」って言われた。
「え……?」
今の流れでそうくるとは思っていなくて、私は思わず間の抜けた声を出してしまった。
「お前ん家にも来たことあるだろ? 覚えてないか?」
言われて、ハッとする。
「カナ……兄……?」
カナ兄の彼女は遍歴が激しすぎて、私、ほとんど覚えていない。
覚えていないけれど――。
言われてみれば……何となく記憶の端っこに引っ掛かってわだかまって。
何か掴みかけたと思った瞬間、息がヒュッと苦しくなって、頭がズキズキと痛み始める。
「――っ!」
どんどん強くなるその痛みに、私は思わず頭を抱えてうずくまった。
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