*俺がお前の

2/16
前へ
/698ページ
次へ
「一緒に帰れるの、やっぱり嬉しいねー」  シートベルトを締めながら助手席でニコニコしてそう言ったら、しれっとそっぽを向いた温和(はるまさ)に、「バカ音芽(おとめ)、はしゃぎすぎだろ」って照れられてしまった。  こちらを見ようとしない温和(はるまさ)の耳が赤く染まっているのを見て、ニヤニヤが止まらない。  温和(はるまさ)の、こういう素直じゃないところも分かってくると可愛くて、悶えるくらい大好きっ!って思ってしまう。 「温和(はるまさ)、ずっと私を守ってくれていて有難う。それから――色々背負わせてしまって……ごめんなさい」  川越(かわごえ)先生にかき乱されて本当にしんどかったのは、日数にしたらたったの2日。  それでも私にとっては高校時代からのトラウマとの決別にもなってしまったから、もっともっと長い時間に思えたの。  今回、何より辛かったのは、大好きな温和(はるまさ)が心変わりをしてしまったんじゃないかと不安で堪らなくなってしまったこと。  佳乃花(かのか)霧島(きりしま)先輩はそんな人じゃないでしょう?って諭されても尚、心の片隅で猜疑心(さいぎしん)を拭いきれなかったのは、私の弱さゆえだと思う。  温和(はるまさ)は、ずっとずっと私のことだけを考えて動いてくれていたのに。  そう思ったら申し訳なくてギュッと胸が苦しくなった。  私は忘れてしまっていてしんどかったけれど、すべてを覚えていた温和(はるまさ)の方が、実はもっともっと苦しくてもどかしい時間(とき)を過ごしたんじゃないかなって思う。  温和(はるまさ)は高校生の時、自分が問い詰めたことで私がパニックになってしまったのを覚えていたんだと思うから。  だから川越先生が臨時で赴任してくるって知ったとき、私に過去を思い出させまいと必死になってくれたんだろうな。
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3103人が本棚に入れています
本棚に追加