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アパートに着くなり「どっち?」って聞かれて、私は「どっちでも……」って答えた。
温和は少し考えてから、「じゃあ、気兼ねなく出来るこっちで」と自分の部屋の扉を開けた。
気兼ねなく?
温和の言葉が気になってキョトンとした私をグイッと引っ張って部屋の中へ引き込むと、ドアが閉まりきるのも待てないみたいに荒々しく壁に押さえつけられた。
「あ、待っ、はる……っ」
性急に塞がれる唇に、待って欲しいと言いたいのに、温和はそれすら言わせたくないみたいに私の唇をむさぼる。
まだそんなに回数を重ねたわけじゃないはずなのに、温和は私の好いところを的確に突いてきて、キスだけで足から力が抜けてしまいそうなぐらい気持ちいいの。
閉まりきった扉を後ろ手に施錠すると、温和が私を抱き上げた。
「あ、あのっ」
お風呂とかお風呂とかお風呂とか……。どうしますか!?
一日中子供達と走り回った後なの。
私、絶対色々汚いです。
そう思うのに、温和は無言で私の靴を脱がせて玄関先に転がすと、自分ももどかしいみたいに靴を脱ぎ散らかした。
「温和っ、あの。お、お風呂っ。それが無理なら……せめてシャワーをっ」
ベッドの上に放り出されるように転がされて、スプリングに小さく跳ね返される身体に戸惑いながら、懸命に温和を見上げる。
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