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「必要ない」
温和は私のお願いをそんな一言で一蹴すると、片手でグイッとネクタイを緩めた。
思わず見惚れてしまうぐらいかっこいい仕草にうっとりしてから、ダメダメ!と首を振る。
流されてる場合じゃないっ。
汚いまま温和に抱かれるとか、恥ずかしすぎるものっ。
「ひ、必要ですっ」
早くも上半身裸になってしまった温和を直視出来なくて、ふいっと視線を横にそらせながらそう言ったら、「気になるんなら俺が綺麗にしてやるから安心しろ」ってどういう意味ですか?
お風呂で温和が洗ってくれるってこと!?
そう思い至って「あ、あのっ、じ、自分でっ」って言ったら、熱に浮かされた艶めく視線で見下ろされた。
「それは……猫にでもならねぇと無理だな」
いつの間にか私の上にまたがるように四つん這いになった温和を見上げて「え?」と思う。
猫? ん? どういう意味?
そもそもお風呂に連れて行ってくれるなら覆いかぶさってくるのはおかしいよ?
「あ、あの……はる、まさ?」
不安に思いながら温和を見上げたら、「少し黙ってろ」って言われて再度唇を塞がれた。
「でも、んっ、は……あの、ぁ、んっ、んんっ」
でもでもでもっ!
唇に隙間ができるたびに何とか喋りたい私は、一生懸命言葉をつむごうとするけれど、その度に舌を絡められ、唇を食まれ、口中を舐め上げられ……。
とにかく息も絶え絶えになる一方で。
しかもそっちに気を取られている間に、いつの間にかブラウスの前ボタンを全開にされてしまっていて、それに気付いて慌てて胸元を隠そうとしたら「隠すな」って手をベッドに押さえつけられた。
「そのままじっと。――出来るよな?」
言われて温和に見つめられると、別に拘束されているわけでも何でもないのに動いてはいけない気持ちにさせられてしまう。
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