3102人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、さっきの返事は?」
温和が後ろから私の手を取って、左手の薬指を意味深に撫でさする。
「ひゃぁ、んっ」
指をそろりと撫であげられただけなのに、何故かゾクッとして変な声が出てしまった。
は、恥ずかしいっ。
その思いに呼応するように、耳が腫れぼったいくらい熱を持ったのが自分でも分かった。
「可愛いな、音芽。耳まで真っ赤じゃん」
佳乃花と一路が一緒にいた時は私の方を見ようとさえしなかったくせに。
2人きりになった途端、これ。
「温和ってジキルとハイド?」
恥ずかしさを誤魔化すようにそうつぶやいたら、「は? なんだよそれ」と不機嫌そうに言われてしまった。
「だっ、だって……佳乃花と一路がいた時は……そんな甘えてこなかったよ?」
未だ薬指を撫で続けている温和の手に右手を重ねて動きを封じると、私は思い切って後ろを振り返る。
最初のコメントを投稿しよう!