*束の間だけ逆?

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音芽(おとめ)」  ベッドに下ろされてすぐ、温和(はるまさ)に優しく名前を呼ばれて、私はくすぐったさに首をすくめる。 「口、開けて」  正面に立って私を見下ろす温和(はるまさ)から熱っぽく言われると、彼と何度も唇を重ねて、それが何を意味するのか覚えてしまった身体は、いやらしくもこれから起こることを期待してキュン、と疼いてしまう。  言われた通り、おずおずと小さく唇を開くと、温和(はるまさ)がしゃがみ込むようにして柔らかい唇を重ねてくれる。  そうして無防備に開いたままの口中に、彼の舌が伸びてきて――。  ぬるりとしたなめらかな感触に、私はゾクッと身体を震わせる。 「音芽、お前、キス、好きだよな」  うっとりと彼の蹂躙になすがままだった私に、温和(はるまさ)がククッと笑ってそんなことを言う。  どちらの唾液とも分からないもので濡れ光った私の唇を、温和(はるまさ)が優しく拭ってくれる。 「そっ、そんなことっ……」  ないって言えなくて語尾がゴニョゴニョと濁る私を見て、温和(はるまさ)が堪えきれないようにギュっと抱き締めてきた。 「俺は……お前とキスするの、好きなんだけどな?」  温和(はるまさ)は本当、ずるいっ。  いつもはこの上なくひねくれもので素直じゃないくせに。  エッチの時だけはやたらと素直なんだもの――。 「温和(はるまさ)はやっぱり……」  ジキルとハイドだと思う。  その言葉を寸でのところで飲み込んで、私は彼にしがみついた。
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