サプライズ、成功?

3/10
前へ
/698ページ
次へ
「……なんだよ、嫌なのか?」  温和(はるまさ)が不機嫌そうにそう言ってきて、私は慌てて首を振る。 「いっ、嫌じゃ、ないっ!」  っていうかむしろ嬉しい。  嬉しいけど……。でも、でも、でもっ! 「あ、あまりにも突然だったから……その、驚いちゃって……」  水道の水を止めてタオルで手を拭いながら、しどろもどろでどうにかそう答えたら、「何だ、だったらサプライズは成功か」って……。  そうじゃないから!  温和(はるまさ)の、バカっ。  ちっとも乙女心が分かってない!  そんな風に一人頭の中でプンスカしてから「心とか……」って思わず苦笑してしまう。  そう言えば小学生くらいの頃からずっと、温和(はるまさ)に「オトメのくせに乙女らしくない」って揶揄(からか)われ続けてたっけ。  それに私が「温和(はるまさ)だって、“温和(おんわ)”って書くくせに全然そんなじゃない!」って応えるのがセットで。  でも……考えてみたらもっともっと幼い頃には温和(はるまさ)、「音芽(おとめ)は世界一可愛い女の子だ」って言ってくれてたんだよね。  同様に私は優しくて穏やかで温かい温和(はるまさ)の名前には、“温和(おんわ)”って字がピッタリだって思ってた。  あの優しかった子供の頃に温和(はるまさ)、私のこと、お嫁さんにしてくれるって約束してくれて。  何度か花で作った指輪をもらったこともあったっけ。  最近は温和(はるまさ)、「オトメのくせに音芽(乙女)らしくない」って言わなくなったなぁ。  そればかりか、まるで幼い頃に戻ったみたいに「可愛い」って言ってくれることが増えた気がする。
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3103人が本棚に入れています
本棚に追加