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「あのね、私……婚約指輪はいらないかなって……思うの」
だって……佳乃花じゃないけど、ダイヤとかついていたら、怖くてつけていられそうにないんだもの。
それに学校だとそれ、つけて仕事はできない気がするし。
「ん? 何だよそれ。俺とは婚約したくないってことか?」
温和が不服げにつぶやくのへ、「違う、違う」と首を振る。
「石が付いてたら子供たちに怪我させちゃうかもしれないし……そう言うの考えたら仕事中は外さないといけなくなるでしょう? 私、もらうからにはずっと身につけていたいから……。だから……。婚約指輪より……もっとずっとシンプルな……。その、いっそのこと温和と……お……いの……こ……指輪がいいなって……思うの」
恥ずかしくて、肝心なところが小声になってしまった。
「ん? いま何つった?」
案の定問い返されて、私は温和の腰にそっと腕を回して、もう一度、ちゃんと言うの。
「あのね、いっそのこと……婚約指輪は飛ばして……その……温和とお揃いの……結婚……指輪が……欲しい……です。――……ダメ、かな」
私も温和に印をつけておきたいのだ、と暗ににおわせながらしどろもどろで何とか気持ちを吐き出したら、温和がピクッと反応したのが分かった。
「えっとね、温和。――手、緩めて……欲しい、な?」
私も物凄く照れ臭いし恥ずかしいけど。
でもやっぱりこういうお話は、大好きな温和の顔、ちゃんと見て話したいよ?
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