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「お前こそ忘れたのかよ」
って温和が怒った顔をしてきて、逆に睨み返された。
「な、なにをっ！？」
それでも一生懸命そう言い返したら「俺が今すぐにでもお前に印付けとかなきゃ不安だっつったのを、だよ」って……。
そ、そういえば確かにそう言ってましたよね。
「で、でも……」
温和の迫力に気圧されて怯む私に、温和が追い討ちをかけてくる。
「音芽。お前、俺に縛られたくないわけ？」
う……。
縛られたいです。がんじがらめにされたいです。思い切り束縛されたいです。
言葉に詰まった私を見て、温和が満足そうに微笑む。
「いい子」
頭を撫でられて、お店の中なことを思い出して、顔がぶわりと熱くなる。
「は、温和っ」
店員さんに呆れられてしまうっ。
そう思うのに、温和はいっかな意に介した風はなくて。
「リア充なんて基本馬鹿ップルの見本市場みたいなもんだろ。気にするな」
って耳打ちしてくる始末。
よくネットなんかで見かける「リア充爆発しろ」の意味が何となく分かった気がして、私は小さく溜め息を落とした。
店員さんは温和が言ったようにこんなの見慣れているのかな？
ニコニコと微笑みながら「どうなさいますか？」と何でもなかったみたいに問いかけてきて。
温和が「もちろん、選びます」って言って、私は今度こそ大きく吐息をついた。
今まで気付かなかったけれど、温和はカナ兄より手強いかも知れません……。
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