お見舞い

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 その絡みで、回覧物に添付する名簿などのように、目に見えてふたりの差別化が必要なときは、私のほうに「霧島(きりしま)(音)」って付けましょうかという話になったの。  これには温和(はるまさ)が即座に「そこは“霧島(妻)”のほうが彼女の下の名前を知らない人にも分かりやすいと思います」とか物申してくれちゃって……。  結局、ではそのようにと決まってしまった。  私の鳥飼(旧姓)で行きます計画も、音芽(おとめ)先生にして、温和(はるまさ)と区別をつけたいという案も、ことごとく没にされて――。  私のことなのに、何だか微妙に納得いきません。  温和(はるまさ)さんは、どこまでも私の下の名をなるべく表に出したくないみたいです。 ***  そんなこんなを思い出して小さく吐息を漏らしたら、なっちゃんから「オトちゃん、もしかしてマリッジブルー?」って聞かれてしまった。 「んー、違うと思いたいんですけど……もしかしたらそうなのかも……?」  温和(はるまさ)に同じ問いかけを向けられたときには違うって断言したけれど、なっちゃんには「もしかしたら」って吐き出せた。  そういうのって気持ち的にほんの少しガス抜きになって有難いなって思う。 「あ、でもね……それでもやっぱり大好きな人と一緒にいていいんだってみんなに認めてもらえるのって……嬉しいなとも思ってます」  そこは誤解がないように。  ちゃんと本心も付け加えてニコッと笑ったら、改めて「おめでとう」って手を握られた。
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