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「私と鶴見先生は……年こそ同い年じゃないですけど、勤め始めたのが同じ年の春で……いわゆる同期です。それで……というのも変な話かもしれないんですけど……私、他の先生方より鶴見先生のこと、知っているつもりでいたんです。だから余計に感じたんですけど――」
横目にちらりと温和を確認したら、不機嫌そうに眉をピクッと動かしはしたけれど、口を挟んでくる気配はなさそうでホッとする。
ごめんね、温和。
面白くないかもしれないけど……。でもお願い、最後まで言わせて?
「私をどうこうしようとしていた時の鶴見先生は……その……私の知っている鶴見先生じゃなかったように思うんです。――す、少なくとも……私が知っているあなたは……同僚を脅してどうこうしようとするような人じゃないかな、って……」
しどろもどろになりながらも何とかそう言ったら、鶴見先生が明らかに驚いたように瞳を見開いた。
それから不自然に私から視線を逸らして――。
「鶴見先生?」
私の言葉を肯定も否定もしない彼に、再度呼びかけたら、鶴見先生が「参りましたね」と吐息を漏らすように小さくつぶやいた。
その苦しそうな声音に、私は思わず息を呑む。
「――おかしいと……思いませんか?」
不意に話を変えられたようで、え?と思う私の肩を、温和が少し落ち着け、とでも言うふうに軽く抱いてくれる。
温和の温もりを感じられるだけで、こんなにも心穏やかになれるから不思議。
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