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「前に鳥飼先生が怪我をなさったことがあったでしょう? あの時にしても……あなたに対してやたら仏頂面をしてつっけんどんな物言いをしながらも、霧島先生が鳥飼先生を物凄く気にかけているのが傍目にもありありと窺えました。――なのに! そのことにちっとも気付いていないあなたに、僕は何とも言えず苛立ちが募ったんですよ」
と言われて――。
余りにもっともな指摘に立ち尽くす私をチラリと見やると、鶴見先生は淡々と言葉を続けた。
「それ以前からね、僕は鳥飼先生と話すたびに胸の奥にジクジクとしたわだかまりを感じていたんです。でも……僕は何とかそういうのを押し隠して……騙し騙し毎日を過ごしていました。でも――。それがね、あなたの怪我と、祖母の入院とで均衡を崩してしまった」
そこで一旦言葉を止めると、鶴見先生が私をじっと見つめていらして。
私はそんな彼から視線が外せなくなる。
「僕はね……あのとき確かに、みんなから愛されているあなたの愛を勝ち取りたいと思うのと同じくらい……。恵まれていることにも気付きもせず、周りからの好意を……その鈍感さであっさりと反故にしてしまうあなたを! 傷つけて人間不信にさせてしまいたいとも思ってしまったんです」
いつもニコニコ穏やかに見えた鶴見先生が、心の中でそんなことを思っていたなんて。
すごく……意外だった。
だからあの怪我を境に、執拗に私に付きまとうようになったの?
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