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そうして小さく吐息をついてから、
「僕は正直今でも人を愛するといいうことがイマイチ理解出来ていないです。ですがそれでも――。そうですね。例えば……撫子が他の男に、鳥飼先生と同じ目に遭わされたりしたらって考えたら腹立たしいとは感じます。……これが霧島先生と同じ感情かどうかはまだよく分からないですが、相手をぶん殴ってやろうかって気持ちにはなりますので」
と続けて――。
あ、今はこのザマなんで無理ですけど……と言って、怪我をした片手を上げて苦笑する。
私はそんな鶴見先生を見て、心底ホッとしたの。
なっちゃんは……きっと鶴見先生にとって特別な存在になってる。
そう、思えたから。
***
「お待たせしました」
と、そこで病室の扉がガラッと開いて、紙袋を手にしたなっちゃんが帰ってきた。
「わっ、ごめんね、なっちゃん、沢山、1人で大変だったでしょ!」
慌てて駆け寄ったら「大丈夫。ちゃんとこぼれないように紙製のトレイにひとつずつカップをはめて紙袋に入れてくれてるし、問題なしよ!」
言いながら、なっちゃんがベッド横の床頭台――テレビや引き出しのついた側机――に紙袋を載せる。
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