幾久しく

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***  着慣れない花嫁衣装――純白のウェディングドレスに、付け毛でたっぷり盛られたヘアメイク。いつもは身に着けたこともないような大きめアクセサリーに、付けまつ毛などなど。  鏡越しにお母さんを見つめるのが躊躇(ためら)われて、それらが崩れないよう気をつけながら、ゆっくりと身体の向きを変える。  ちょっと動くたびに衣擦れの音がして……自分はいま、とっても重装備なんだと思い知らされた。 「それがないから困ってるのよぉ〜。あなた達見てたら、ハルくんに妹ちゃんでもいてくれたら違ったかも知れないのにってありもしないタラレバなこと思っちゃ〜う」  苦笑気味に言って、 「あの子、遊ぶ女の子だけは相変わらず馬鹿みたいに沢山いるみたいなんだけど」  そう付け加えて溜め息を落とすお母さんに、私は思わず苦笑した。  お兄ちゃんにも、いつか本気で想える相手が出来ればいいんだけど。  あの人はそう言う人に出会えたら、案外驚くほど一途なんじゃないかな?って思うのは……ある意味そんな兄に執着され続けた、たったひとりの妹の勘です。  そんなことを考えながらふと視線を転じたら、母の背後の大きな鏡に映る自分と目が合った。  ひゃー。馬子にも衣装とはよく言ったものね。  お母さんの背後の壁は全面鏡張りになっていて、そこに映る自分の全身像の、余りのお姫様ぶりにドキッとする。
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