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「だからお前の誕生日に入籍したかったんだよ、俺は」
今日――8月8日だって覚えやすくていい日付だと思うけどな。
そう思いはしたけれど、温和の言いたいことも分からなくはない。
「ごめんね。希望叶えてあげられなくて」
役所を出て、温和の車に乗り込んですぐ。
我を通してしまったことを素直に謝ったら、温和が頭を優しく撫でてくれた。
「――まぁさ、その日にこだわったのだって俺のワガママだし。それに考えてみたら音芽の誕生日はお前が生まれてきてくれたことを純粋に祝うだけにした方がいいよな。結果的にゃ、今日を入籍日にしたの、良かったのかも知れねぇって思うわ。――結婚記念日が来るたびに、お前の花嫁姿を思い出すのも悪くない」
言って、長いことはめていた仮もののクローバーリングの代わりに、今日やっと温和の手で指におさまった、例の「お前可愛すぎてなんかムカつく」メッセージ入りのエターナルリングを優しくなぞる。
私の手に添えられた温和の手にも、シンプルだけど私と対のプラチナリングがはまっていて――。
それは婚約中にはなかったものだから、私、すごく幸せな気持ちになれたの。
「温和、私たち、本当に夫婦になれた……んだよ、ね?」
私の手に触れる彼の手に右手を重ねたら、「バーカ。当たり前だろ」とキスをしてくれて。
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