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「ったく、どこ行ったんだよ……あいつら!」
女と言うやつは、なんだって店に来ると年齢関係なく目の色が変わるんだろう。
たまには家族サービスをと思った俺だったが、休日ということもあって、多くの人でごった返したショッピングモールの様子に、正直辟易していた。
山とか川とか海とか……人の少ないトコへ連れて行きゃーよかったぜ、と思ったりしたけれど、2人からのリクエストがモールだったのだから仕方ない。
33の身には、この雑踏は堪えますね、音芽さん。
思いはするけれど、嬉しそうな妻と娘の顔を見ていたら、まぁ、こう言うのもたまには悪くねぇか、とも思えてきて。
***
「なぁ、ちょっと俺、トイレ行ってくるからこの店から動かずにいてくれるか?」
たくさんの雑貨小物に目をキラキラさせている音芽と、今年小学校に上がったばかりの娘の和音にそう告げて傍を離れたのは、ほんの数分前のことだ。
「音芽のやつ、ちゃんと『分かった』って返事したよな!?」
何のことはない。2人と別れた店に戻ってみたら、あいつらいなくなってやがんの。
動くなっつっただろ!
心の中で盛大に毒付きながら、スマホを取り出したら……。
「マジか!」
スマホ、電池切れてんじゃねぇか。
そういや、昨夜、音芽を抱いて……そのまま寝落ちして……充電、し忘れてた……。
ハァーーー、っと思い切りため息をついてから、周りを見回す。
右をみても左を見ても人、人、人。
絶対こん中からあいつら見つけんの、無理だろ……。
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