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どうするよ、と迷った俺は、和音も一緒だし……と思って「迷子センター」に向かうことにした。
そこで事情を話して……〝和音の〟呼び出しの放送でもかけてもらおう。
そうすりゃ音芽も一緒に来んだろ。
音芽は結構な方向音痴だが、和音が生まれてからはこのショッピングモールの“迷子センター”の位置だけはしっかり頭に叩き込んでいる。
俺が一緒にいないとき、万が一があったら……と2人で話して覚えさせた。
そこになら何処にいたって辿り着けるはずだ。
よし!
そう思って歩き出した俺の耳に、ピンポンパンポーンという、ドミソドの音階に則ったコールサインが聴こえてくる。
次いで、「迷子のお知らせです」と言う女性の声が流れてきて。
ま、こんだけ人が多けりゃな……と自分の現状を棚上げして思った俺だったが――。
「○○市からお越しの霧島温和さん、お連れ様がお待ちです、至急B館1階迷子センターまでお越しください」
とかっ!
なんで俺!!
おーとーめぇー!!!って思ったけれど……多分これ、和音の入れ知恵だ。
普通「お客様のお呼び出しを〜」のところが「迷子」になってんのも和音の浅知恵っぽいし。
歳の割にやけにませたところのある娘だ。
奏芽に月1で預けてる影響かも知んねぇけど、今はそんなことどうでもいい。
スマホの電池が切れていることを思いっきり呪いながら、俺は懸命に人混みをかき分けて「迷子センター」を目指した。
この館内放送、知り合いに聞かれてませんように!と祈りながらっ!
あまり遅くなったら……また呼び出されるかも知れねぇだろ?
END(2020/08/29)
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