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今春小学校に入学したばかりの娘の和音は、ただ今絶賛うちの兄――つまりは叔父――に恋をしています。
さすがにそれを手放しに応援することはできないけれど、恋する喜びやときめきが素敵なことは、私も嫌というほど知っている。
だから、その気持ち自体は応援したいの。
その和音が、家族で出向いたショッピングモール内の雑貨屋さんで、可愛いヘアピンが欲しいと言い出して……。
お店の雰囲気からすると、小1の和音にはちょっと大人っぽ過ぎるかな?というアクセサリーばかりが並んでいたのだけれど、年上の男性に恋心を抱くだけあって、和音は同年代の女の子たちよりかなりおしゃまさんだから。
「ねえママ、これ、すごく綺麗だと思わない?」
薄紫の羽の先端に数カ所、ミントグリーンの差し色が入った、小さなレジン製の蝶がついたヘアピンを手に取って、和音が見せてくれる。
小ぶりだけど、確かにとっても綺麗。
子供でも手の届きそうなプチプラなところもいい感じ。
「これ付けてったら奏芽、気付いてくれるかな?」
来週末、和音は奏芽のところへ行くことになっている。
私たち夫婦、結婚式の時に、月に1回は2人きりの時間を持つようにします、という誓いを立てたのだけど、お兄ちゃんがそれを覚えていてくれて、毎月のように和音を率先して預かってくれているの。
赤ちゃんのころは思わず後ろ髪を引かれてしまうぐらい泣いて親を恋しがった和音も、ここ数年は、逆に月に1度のこの兄との逢瀬をとても楽しみにしてくれている。
そう。何なら今みたいにおしゃれして行きたいと願うほどに。
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