■呼び出し!? Another side/オマケ的SS②-2

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「気付いてくれるといいね」  女の子の扱いに慣れたお兄ちゃんなら――例えそれが小さな女の子相手であったとしても――絶対に気付いてくれると分かっている。それなのに何となく言葉を濁したのは、親として娘の恋心を素直に応援できないもどかしさから。 「ママ、これ、和音(かずね)のお小遣いで買っても、いい?」  鏡の前。私が子供の頃から結婚してすぐの頃までずっとしていたみたいなボブをした和音(かずね)が、自分の髪にヘアピンを当てて、納得したみたいに小さくうなずいた。そうして、気に入ったらしいそれを買ってもいいか?と聞いてきたのへ、私は小さくうなずく。  ちょうどその時、少し離れたところに佇んでいた温和(はるまさ)が近づいて来て――。  私に何かを言ってきたの。  でも、雑踏と和音(かずね)の応対で、気がそぞろだった私には、温和(はるまさ)の言葉がよく聞き取れなくて……そのくせ曖昧に頷いてしまった。  そうしながら、私はとりあえず和音(かずね)に、「気に入ったんならそうしたらいいと思うよ」と答えたの。  そんな私たちに、「じゃあ和音(かずね)、レジ、行ってくるね。ママはパパとここにいてね?」って和音(かずね)が言ってきて、「ん、分かった」って、背後に立つ温和(はるまさ)をちらりと見遣りながら返したの。  温和(パパ)と待っていて、っていうのは恐らく和音(かずね)の独立心の現れで。  私はそれを尊重してあげたいって思いつつ、でも彼女から目を離すのだけはダメって思ってじっと和音(かずね)を目で追ったの。  てっきり温和(はるまさ)も、私のそばでそうしているものだと信じて、和音(かずね)がレジ前で背中に背負ったリュックサックからお財布を取り出すのを注視する。 ***  和音(かずね)は月に500円のお小遣いを、普段はしっかり貯めておいて、今みたいに欲しいものが出来た時にスパーンと使う男前なところのある女の子だ。  こういうお金の使い方も、何となくお兄ちゃんを彷彿とさせるの。
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