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「和音。ママね、迷子センターの場所だけはバッチリ分かるわ!」
任せといて!と胸を張ったら「ママ、かっこいい!」って和音が手をパチパチ叩いてくれて。
私は娘に元気付けられて、よし、大丈夫!って思えたの。
「行こう?」
この期におよんで、和音とまではぐれてしまったら大変だ。
私は娘の手をしっかり握ると、2人で人混みを掻い潜るようにして歩き出した。
目指すはB館1階迷子センターよ。
***
目的地に着くとすぐ、和音が「迷子なのっ!」と係のお姉さんに食いつき気味に言って。
そこでふと和音の言葉の危うさに気付いて、「あ、和音、迷子じゃなくて……」って言おうとしたら、「迷子じゃないの?」って不安そうな顔で見つめ返されてしまった。
途端、私は和音の自尊心を傷付けられない、って思ってしまって。
ごめんね、温和っ。
しばし後、館内へと流された放送を聞いて、私は背筋がゾクッとしたの。
「迷子のお知らせです。○○市からお越しの霧島温和さん、お連れ様がお待ちです、至急B館1階迷子センターまでお越しください」
あーん。これ、あとで絶対温和に怒られるやつ!
でもでも温和だって悪いのよ。
私たちを置いてどこかに行ってしまったんだもの。
そこを責めたらきっと、お咎めも半減するよね?
そう思いながら、私はソワソワしながら和音と並んで温和を待った。
***
結局、全面的に悪かったのは私で、夜に彼からたっぷりとお仕置きをされてしまう羽目になってしまうということを、その時の私はまだ知らないの――。
END(2020/08/29)
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