■瞳の中に映る虹/オマケ的SS③

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温和(はるまさ)の目、綺麗ね……」  うっとりつぶやいたら「バーカ。綺麗っていうのはお前の目のようなのを言うんだよ」って。これ、何の褒め合い?  そういえば和音(かずね)はどっち似の目なんだろう?  ふとそんなことを思ったところで、「ねぇ、パパもママもそんなに顔近付けて……何してるの?」って声をかけられた。 「ひぁっ!?」  思わず悲鳴にならない奇声を上げて温和(はるまさ)から離れたら、すぐ横に立ったパジャマ姿の和音(かずね)にキョトンとされた。 「あ、あの、こっ、これはねっ」  慌てる私に、温和(はるまさ)はのほほんと落ち着いたもので。 「おはよう和音(かずね)」  悪びれた様子もなく娘に時の挨拶をすると、 「なぁ和音(かずね)、知ってるか? 目の中の黒いところがあるだろう? あそこの模様って、ひとりずつみんな違うんだってさ。パパとママはそれを確認してたんだよ。和音(かずね)のも見せてごらん?」  とか。  さすがです、温和(はるまさ)さんっ。 「何それ、面白そう! 和音(かずね)もパパとママの見るっ!」  和音(かずね)がにっこり笑うのを見て、私はとりあえずフライパンに乗っかったままの目玉焼きをお皿に盛り付けに戻った。  食卓について、睨めっこみたいに顔を突き合わせる温和(はるまさ)和音(かずね)を横目に見ながら、何て幸せな朝なんだろうって思った。 ***  この後、この〝虹彩を見つめ合う現象〟が、和音(かずね)からお兄ちゃんへ、お兄ちゃんから鳥飼(とりかい)家とお兄ちゃんの彼女さんへ、彼女さんから彼女の通う大学へ、とどんどん伝播していくことになるなんて、この時の私には知るよしもなかったの。       END(2020/08/31)
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