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大好きな温和と結婚して、1ヶ月が過ぎようかと言う頃。
家を建てるまでの暫定措置で、温和は私が住んでいた側の部屋に移り住んできています。
9月に入って秋の気配が少しずつ忍び寄ってくるようになった、そんな夕暮れ時。
そろそろ夕飯の支度をしないと、っていう頃になって、ソファに並んでテレビを見ていた温和が、小さくあくびを漏らした。
「眠いの?」
翌日が休日だと思ったからかな。
温和は昨夜、なかなか眠ってくれなくて。
それはイコールで私も眠れなかったという意味になるのだけれど、恥ずかしいので今は思い出さないようにしなくちゃ。
そう思って無意識にふいっと温和から視線を逸らしたら、「なぁ音芽。お前いま、なに考えた?」って、私の方に頭をもたれかけるようにして、彼が聞いてくるの。
「な、何もっ」
ふるふると首を振りながら言ったら、「俺の奥さんは嘘つきですね」ってニヤリとされた。
「は、温和っ。ばっ、バカなこと言ってないで、眠いんなら寝てっ」
そこまでで止めておけばよかったのに――。
「昨夜いつまでも寝ないからこんな時間に眠くなるんだよっ?」
照れ隠しで余計な一言を付け加えてしまって、私の肩口に額を寄せていた温和に、クスクス笑われてしまった。
「あー、エッチな音芽さんは昨夜のあーんなことやこーんなことを思い出してたわけか」
ちっ、違いますっ!って慌てて否定したけれど、自分でも耳までぶわりと熱を持ったのが分かって、無駄な足掻きだって思ったの。
「ホント、お前は素直じゃねぇよなぁ」
温和にだけは言われたくありません!
そう思ったけれど、反撃が怖くて口籠る。
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