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「音芽、アイス食いたい」
夕方、仕事帰りに温和と一緒に夕飯の食材を買い出ししたの。
その時に温和が「暑いしアイス食いたい」とか言い出して。
「もぉ〜、子供みたいっ」
そう言えば温和、子供の頃からアイスが好きだったっけ。
特に、ソーダ味のシャリシャリした定番のやつ。
きっと今から選ぶのも特徴的な男の子キャラの描かれたアレに違いないと思っていたら……。
「なっ、何で」
くだんのアイス。1本ずつ個包装になっているのじゃなくて、6本入りのバラエテイパックをカゴに入れる温和に、私は思わず眉根を寄せる。
「私たち2人家族、だよね? まさか実家に持って行ってみんなで食べるの?」
あ、でも。それだとお互いの両親と私たちで6人。
カナ兄のがない。
「みんなで食べようと思ったら1本足りないよ……?」
恐る恐る付け足したら、
「バーカ。別にアイスなんだから一気に食う必要ねぇだろ」
そこまで言って、温和はニヤリと笑うと、
「それにお前。奏芽は実家出てるだろーが」
仮に今から実家へ持って行ったとして、ちょうどいい数じゃねぇかと私の頭をポンポンと叩く。
「お前、たまに突飛な上になんか抜けたこと言うよな」
ついでのように鼻の頭をキュッとつままれた私は、ムゥッと頬をふくらませる。
「よし、とっとと帰るぞ」
ふくらませたほっぺたも、当然のように温和にポスッとつぶされて、クスクス笑われた。
挙げ句、「子供みたいなのは音芽さんの方じゃないですか?」と追い討ち。
そんな温和に、私は苦し紛れ、彼に聞こえないよう声をひそめて「温和のバカ」ってつぶやいたの。
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